ホーム » 未分類

未分類」カテゴリーアーカイブ

「ハウス」とおやつの関係

柴犬の『レディ』の2回目のレッスンのとき、飼い主¥主さんが「ハウスができるようになりました!」と言うので、さっそくやって見せてい
ただくことになりました。

ご主人がおやつを持って「ハウス」と声をかけましたが……、レディは入りません。ご主人がだんだんムキになってくると、ハウスをするどころかご主人に向かってワンワン吠えだしてしまいました。

キッチンでお茶の用意をしてくださっていた奥さんがあわててやって来て、間違いを指摘。「あなた、このおやつじゃダメよ!」と。そして、棚にある容器に手をかけた瞬間、レディは吠えるのをやめ、指示を出されてもいないのに、すぐにハウスに入って座りました。

レディは、「お父さん、違う違う!それじゃないよ!」とでも抗議していたのでしょう。レディによる、まさに「お父さんのトレーニング」です。

指示に従うこととおやつのランクには、深~い関係があるのです。犬がしたくないときにしたくない行動をさせるには、「どうしてもそれが欲しい!」と思うようなおやつを使う必要があります。それは、朝、昼、晩と、時間がくれば出てくるドッグフードではダメだったりします。

レディの飼い主さんたちには、正しい関係を作るベースプログラムの実施の仕方を再度見直し、「ハウス」のトレーニングを少なくとも毎日5回、とっておきのおやつを使ってするようにお願いしました。

レディのように、すでに「ハウス」を理解している犬の場合には、まずおやつが手にあるのを見せてから「ハウス」と声をかけます。ハウスに入らなかったら、おやつは与えずに無視します。どうしてもハウスに入れなくてはならないときは、首輪をつかんで誘導して入れ、もちろんおやつは与えません。

スムーズにハウスに入るようになったら、次は気付かれないようにおやつを持ち「ハウス」と声をかけます。入ってくれたら、よくほめておやつを与えます。入りが悪かったら、まだそのステップには早いと考えて、前のトレーニングに戻りましょう。

わが家では、留守番をさせるときにはクレートに入れて出かけるので、私が支度を始めると、犬たちはそわそわ落ち着かなくなり、ハウスの指示を出す前に勝手に入ったりします。

指示に従っているというよりは、空気を読んでいる(?)といったほうが適切かと思いますが、今でも必ず煮干しやパンなどのごほうびを与えています。

おかげさまで、全員ハウスに収めるまでにほんの数秒しかかかりません。おやつを与えないでハウスをさせたい飼い主さんもいらっしやるようですが、とくに出勤時はあまりムダなエネルギーを使いたくないので、楽な方法でやっています。犬たちもとてもうれしそうにしていますよ。

 

甘噛みの癖を直すには

甘噛みに関しては、柴犬という犬種の性質、ショップでの環境から子犬のころに成犬からの教育を受けていない可能性が高いこと、「痛い!」と大きな声で叱る方法を用いた場合さらに興奮する可能性が高いことなどを考えて、加減を教えるのが難しいと判断。徹底してやめさせることにしました。

もし甘噛みをされて痛かったら大きな声や大げさなリアクションは控え、静かに「ダメ(「こら」、「NO」などでもOK)」と伝えて、淡々とハウスに入れてしばらく放っておくようお願いしました。

犬は暇になると甘噛みをするので、ケン太と接するときは、できるだけ暇にしないよう気を付けてもらいます。付き合うパワーがないときは、悩まずケン太をハウスに入れ、とにかく甘噛みからうまく逃げることを考えてもらうようにしたのです。

意識改革と合わせて、愛犬との正しい関係を作るためのベースプログラム)の実施と、以下のことをお願いしました。

一緒に遊ぶときは暇にさせないよう努める。

  • 甘噛みしてきたらおもちゃで応戦するか、とにかく逃げる。逃げきれなかったら淡々とハウスに入れる。
  • 「オイデ」、「オスワリ」、「マテ」、「ハウス」のトレーニングをしっかりして、飛びついて噛もうとしたら「オスワリ」、「マテ」を指示する。お座りと飛びつく行動は同時にはできないもの。飛びつくのを叱ってやめさせるのではなく、相反した行動を要求することで、困る行動を封じ込める方法。
  • ほめるときは心を込めてしっかりと。叱るという発想は忘れて、悪いことをしたら「ダメ!」などひと言だけ静かに注意し、ルールとして淡々とハウスに入れる。いつ何時でも、できるだけ熱くならないようにする。
  • できるだけ散歩に出かけてケン太に気晴らしをさせ、エネルギーを使わせるようにする。
  • ブラッシングや足ふきなど嫌がることをするときは、必ずとっておきのおやつを使う。

トレーニングは順調に進み、3ヵ月ほどで飼い主さんにしつけのバトンタッチをしました。その後、ケン太に再会したのですが、ケン太は、とても落ち着いた紳士的な柴犬に成長していました。飛びつきも甘噛みもなく、ちょっとさみしいくらいでした(笑)。

飼い主さんは何度もめげそうになったそうですが、あきらめず、自分を、そしてケン太を信じてがんばったそうです。愛犬に関するすべてのことは自分の責任だと、4本のジャーキーを握りしめ、1本1本与えながら、噛まれないように必死に四肢をふき続けた飼い主さんのがんばりに、私も多くのことを学ばせていただきました。

「今思えば、つらいというより楽しかつたです。ケン太のためなら何でもできそうです」。ケン太との理想の関係を築いた飼い主さんの笑顔はとても凛々しく、美しく見えました。

 

甘噛みの加減

「甘噛みの加減」を教えることは大事なことですが、それがうまくいかない『ケン太』のケースをご紹介しましょう。ケン太の甘噛みはパンパではありませんでした。あいさつをしてみようと手を出した瞬間にガブリ。

牙が刺さり、私の手からは血が。悪気はなく、とても喜んでいるのですが、まだ鋭い乳歯で加減なく噛みついてくるので、簡単に皮膚が破れます! 中途半端によけても、飛んだり跳ねたりして手に噛みつこうとし、届かないとわかると足に、という具合でどこにでも噛みついてきました。今までたくさんの犬たちと出会ってきましたが、ケン太は今でも「甘噛み犬ナンバー1」です。

飼い主さんは、ケン太が初めて飼う犬だそうです。ケン太と出会ったペットショップは、いわゆる悪徳ショップと言ってもいいでしょう。同じ店にいたケン太の同胎犬のメスは、飼い主さんが連れ帰ったその日からぐったりし、3日後に亡くなりました。店のお抱えの獣医師によると、胃炎?と診断されたそうです。じつはこの件は裁判になり、資料提出には私も協力したのですが、飼い主さんが勝訴されました。当時ではたいへん珍しかったのですが、最近では飼い主さん側が有利になることも増えてきているようです。

そんなショップから救いたい!という思いのもと迎えたケン太ですが、出勤するときにもスーツの裾に噛みつくため、朝食は下着のままリビングで済ませ、玄関でスーツに着替えて出勤するとのことでした。

そんなふうに犬を優先してはしつけの基礎が築けないので、朝はケン太をハウスに入れるようアドバイスすると、飼い主さんは「朝は時間がないので、少しでも出してやりたくて」とおっしやいます。時間に余裕がない朝は、飼い主さんが慌てれば慌てるほど犬にとっては楽しい動きになってしまいます。飛びつかれて「やめて!」などと悲鳴をあげれば、犬はますます興奮します。だって、楽しすぎますから。

もっとケン太の行動をコントロールすべきで、「都合のいい女」になってはいけません。今のままでは、「ケン太王子」のご気分がよろしいときには言うことを聞いてもらえても、やりたくないときには従ってもらえなくなる危険性があります。

ということで、飼い主さんとケン太の理想の関係を作るためのベース作りをすることにしました。まずは飼い主さんの意識改革が大事です。そこで私は、かの有名なスポ根テニスマンガの登場人物・お蝶夫人を例にあげることにしました。

「よくってよ、ひろみ」。私は、お蝶夫人のこのセリフが大好きです。ひろみというのは、彼女に憧れるテニス部員の名前です。彼女がひろみと会話するときは、かなり「上から目線」なんですが、いやらしい感じがしないんです。これは、ひろみがお蝶夫人に憧れているということや、お蝶夫人もひろみをかわいがっており、やさしく見守ったり、時には厳しく指導したりしてひろみの成長に尽力している、という関係からくるものだと思うのです。愛情が感じられる理想の関係だと思っています。

飼い主さんには、お蝶夫人風にケン太と向き合ってもらうようお願いしました。「オスワリをなさい、ケン太!」「よくできたわね、ごほうびをあげましょう」「できないのですか? では、ごはんはあげなくってよ」

これが飼い主さんにはハマったようで、とても気に入ってくださいました。

しつけにはこのようなお蝶夫人風の態度が大事になるのです。

訓練所で学んだ犬の体罰トレーニング

私が実際に経験した、訓練所が開設する訓練士養成アカデミーでのことを、誇張することなくありのままにお伝えしたいと思います。

その学校は都会の真ん中にあり、ガラス張りのエントランスの中では、ジャーマン・シェパード・ドッグが悠々と伏せて寝ていました。その様子を私は毎日感動して眺めていました。

ふだんは先輩トレーナーたちが教えてくれるのですが、たまに校長が指導をしてくれることもありました。最初に校長の技術を見たときには、鳥肌が立ちました。それはまさに、技術というより芸術。校長が指示を出すと、どの犬もまるで魔法にかかったように、素早く美しく指示に従うのです。校長が体を1~2m動かすだけで指示を理解し従う犬たちを見て、自分ちその技術をぜUとも身に着けたいと思いました。

ところが、その学習をさせるために用いられていた手段は、犬を手でたたく、本っ端でたたく、蹴る、棒で突く、チェーンカラーで吊り上げる、リードで打つといったことでした。怖いもので、その方法が正しいと教え込まれた私は、疑問を抱くことなくそれらの手段を実行してしまっていました。

もちろん、訓練所で学んだことには、役立つものもたくさんあります。五感をすべて集中させる繊細なトレーニングを経験してきたことは、自分の技術を高めることになりましたし、それ以上に気持ちで犬と付き合うことの難しさ、大切さを実感することになりました。今の私に、飼い主さんの犬を観察する力があるとすれば、それはあのころ犬たちと精神的なパドルを毎日真剣にこなしてきたことがベースになっていると思います。そして、行動学などの知識が身に着いていくほど、体で感じた犬だちとの会話の重要性を改めて実感するのです。

当時、訓練所の校長の口癖は「犬と会話をしなさい」でした。今やっと、校長が言っていた意味が少しだけ理解できるようになったと感じます。

小さな疑問を感じながらも、訓練所の卒業試験には無事合格。ライセンスを取得して研修を終えた後、そのまま訓練所に勤め始めたのですが、2年が過ぎたころ壁にぷち当たりました。なかなか上達できずに苦しんでいる私に向かって、ある先輩がこんなことを言いました。

「犬が好きな人はいい訓練士になれない。犬が嫌いな人ほどいい訓練士になれる。努力しても上達できないなら、訓練士なんかやめたら?」

その先輩の顔ほどでも恐ろしく、ハッと目が覚めたのを感じました。

「何かが間違っている。私はここにいてはいけない。」

そんな気持ちが心の奥底から突き上げてさて、大人気ないことに次の日から訓練所に行くのをやめてしまいました。お給料ももらわず訓練所から逃げ出してしまったのです。

退所後、オーストラリアに渡り、そこの訓練所に入りました。

その訓練所で食べもので誘導して犬に行動させるという「陽性強化」のトレーニング方法を学んだ今では、体罰を使っていたあのころを後悔するばかりです。

体罰がすべていけないと言うつもりはないのですが、今では体罰なしで良い関係が作れることがわかりました。むしろ、なしのほうが良い関係が忤れることも明らかです。自宅で生まれた愛犬の柴犬に関しては、溺愛して甘やがし放題なのに、飼い主はもちろん、他人に迷惑をかけるような柴犬には育っていない……と思います。

オーストラリアのスタッフと話をしていたとき、体罰を使って訓練をしてさてしまったことを恥じる私に、教育担当のスタッフが「誰にだって間違いはある。でもあなたはよく気付いた。気付けな裙ったら、さっと今でも過ちを繰り返していたでしょう」と励ましてくれました。皮肉にも、訓練所の先輩の怖い顔、吐き出された言葉が私を救ってくれたのです。

やっぱり私は、犬が大好きです。